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Logos 1.0

言葉(文字)の一辺一辺を結びつけて統合させることに始まる作品群です。他人に言えない思いを言葉にして晒すと同時に隠蔽する。それによるカタルシスと感情の解放を求めて制作しました。

Logos

これらの作品では、思いを言葉にし、それを他者には認識できない形式に変換したうえで、他者に晒すことに試みています。


そもそも言葉は、それが持つ概念によって世界を理解し、区分し、名もないような感覚や感情を整理立てて、反復可能なかたちで他者に伝達するためのツールと言えます。しかし私は作品の中で、そのような言葉を、言葉として在らせながらも他者に伝達しません。


今回私が採用した手法は、 自らの思いをまずは言葉によって文節化し、それを画用紙上に記したうえで、その文字の一辺を結びつけ、再びそれを全体に還元する、というものです。Logos 1.0では文字と文字を結ぶ手立てとして、筆ではなくスポイトを使いましたが、それは、スポイトに墨を含み、それを押し出しながら線を描くことで、深層のうちに存在する自らの思いが、無意識のままに墨の出る量、それが残す形となって表出することを可能にしています。Logos 2.0以降では筆とスポイトを組み合わせることで、表現の広がりを探っています。


そうして出来上がった形態は、留まり続ける思いから成る言葉を出発点とし、その一端をかたちとしてとどめながらも、それらを再び統合したときに生じる、感情や重力感といった独特の力をもっています。


さらに、この作品は、この言葉の統合を成した人だけが、ロゴスとしての言葉の意味を認識しているという「非対称性」を含蓄します。ある側はそのロゴスを完全に把握し、もう一方の側は何も把握できない。すると、それを把握する側には一種の優越性が伴います。だからこそ、自らのなかに留まり続ける思いを、他者に認識されない形式で発露するときに、ある種のカタルシスが伴います。むしろ、それが、私がこの作品を描く原動力となっていることは否定しません。より多くの他者の目に晒されることによって、この作品の持つ非対称性は増幅し、作品の持つ力は最大限に引きだされるものとなります。


強調したいのは、この表現はそうした刹那のカタルシスを超えて、書き手自身がロゴスから解放される行為でもあるということです。自らの中に留まり続けるロゴスから解き放たれたとき、やっとその感情や感覚に存在する「本質」と向かい合い、理解し、付き合っていけるようになるはずです。

 

2018年7月28日

Logos解説
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